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書楼弔堂 破暁 [京極夏彦]

小説すばるで連載されていた京極夏彦さんの新シリーズ「書楼弔堂」が
ハードカバーで書籍化。題名は「書楼弔堂 破暁」
tomuraihagyo01.JPG
著者インタビューなどもある集英社特設サイト

表紙は1話に登場する月岡芳年による「幽霊之図うぶめ」!
一見、はかなげな女性の後ろ姿の絵で派手さは無いのだけれども
ちらりと見える赤ん坊の足と腰巻きの赤色に目をやると
子抱かせ妖怪「うぶめ」だとわかる作品。
見えない顔への恐ろしさに薄ら寒さを感じさせながらも
どこか切なげな身体の表現が秀逸で月岡芳年の作品中でも好きな絵だったのでとても嬉しい


収録されているのは小説すばる掲載分の第6話まで。
通例だった単行本化での書き下ろしはありませんでした
(´・ω・`)期待してたカバー裏のオマケも無し…
しかし、連載時と違う部分がありまして
作中で登場人物達がそれぞれ書楼弔堂の店主から薦められ手に取る
その後の人生の歩みを決定づけたのかもしれない重要な書物の図版が
カラーで挿入されているのです。
tomuraihagyo02.JPG
巻末に資料掲載というのは目にもしますけど
まさに白い紙と黒い文字列の物語に没入している途中で突如現れる色彩の仕掛け!
作中人物達が感じた衝撃体験を
同時に読者にも襲わせる演出が実に面白いのです
装幀担当があの菊地信義さんだと知って納得(・∀・)





この小説は明治時代に実在した人物が毎話ゲストとして
都内にある不思議なたたずまいをした古書店「書楼弔堂」に訪れ
各々が江戸時代から価値観も何もかも突然変化した明治の世ならではの苦悩を
憑物落としのように語る弔堂店主によって
後の世に残る業績へのきっかけとなった(のかもしれない)一冊の本を得る作品です。


登場するのは月岡芳年、泉鏡花、井上圓了、巌谷小波など
業績や作品や逸話は何かしらの形では目にはしていても
その人自身となると時代劇や大河ドラマや漫画でもあまり登場しそうもない
ちょっと一般には馴染みのない人達ばかり(笑)

そんな歴史資料の記述上だけで断片的で平面的な存在だった人物が
逸話を所々に組み込ませながら
京極さんならではの緻密で重厚な心情描写によって
深みのある立体的なキャラクターとして再構築される事で
いつのまにか虚実入り乱れた文章で魅せるのが実に面白いです。

妖怪研究家としても数多い逸話を残した井上圓了の描写は
当時の圓了を京極さんは見た事あるんじゃないの?と思うぐらいに
圓了らしい振る舞いにもうニヤニヤしっぱなしでした(*°∀°)=3
やっぱり変人で素敵だわ圓了さん



明治初期が舞台だった「巷説百物語」の登場人物のその後や
昭和27年が舞台の「京極堂シリーズ」の中禅寺秋彦の祖父と思われる中禅寺輔が
登場するなどと他作品とも実に深く世界観を共有するので
第二季の開始がホント待ち遠しいです(・∀・)時代が飛んで水木しげる大先生出ないかな~









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シマリス

本年もありがとうございました。
来年も宜しくお願いいたします。
来年も素敵な一年になりますようにお祈りいたします。
よいお年をお迎え下さい。
by シマリス (2013-12-31 00:04) 

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