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書楼弔堂 炎昼 [京極夏彦]

書楼弔堂 第二シーズン
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第7話から12話までを収録

やはり単行本化での新規書きおろしはありませんでしたが、
表紙カバーは明治時代に若松賤子が「小公子」と日本語訳した時の
装画を元にデザインされてます。
今作での主人公である天馬塔子が弔堂店主に薦められた中から
選んび鮮烈な初めての読書体験をしたのと同じ装画をこのような形で
目にすることができるのはなんとも嬉しい装丁の仕掛けでした。
できれば連載時に掲載されていた煙楽さんの挿絵も
収録してほしかった所(´・ω・` )残念…文庫で収録してくれないかしら


今回の炎昼ではとても凝った3段階の構成をしています。

後の世で各分野で劇的な変化を起こす実在の人物達を
史実のエピソードを元に生き生きとした人物造型し一話完結で
ゲストのお客として現れ、後の大変革の兆しに繋がったかもしれない本を
弔堂で見つけるのを主軸に

その脇では、薩摩武士の祖父との確執から塔子が新しい明治の時代を
生きる女性になる現代人にとっては、ささやかのようでも
当時の人にとっては大胆な変化へと繋がる塔子のお話。

さらに帝大法学部在籍で叙情的な作風の詩人である松岡國男が
後の民俗学の祖“柳田國男”へと章を読み進める内に
徐々に変わっていく様が克明に描写されるのが進行していて、
炎昼を読み終えたときに柳田國男が明確に浮かび上がる
仕掛けが組み込まれてて実に読み応えがありました。

弔堂店主から教え与えられるのはなく、
各々が答えをもともと内包しているけど、ソレに気づけてないのを
弔堂に指摘されるだけというのが禅の教えのようなやり取りも
ユニークですよねぇ、弔堂シリーズは。



本作での別作品とのリンクは姑獲鳥の夏で京極堂こと中禅寺秋彦が
骨壷から出して仏舎利(骨)だと干菓子を使って関口に騙った
甘味処「甘月庵」が登場したぐらいですかね、わりと老舗だった甘月庵。

あと、気になるのがまだ正体について情報が少ない弔堂店主と
丁稚の撓(しほる)。
私は撓が鉄鼠の檻で京極堂に古本を指南した洋書が専門で
業者としてより蒐集家として一流だという横須賀の倫敦堂主人の
山内銃児ではないのかと妄想しているのですが…。
書楼弔堂の時代は明治30年前後(1897)なので
鉄鼠の昭和28年1月(1953)では弔堂の時に撓が10歳ぐらいならば
66歳ほどでギリギリ…山内はそんなに老人だとは
描写されてなかったけれどやっぱり別人かなぁ…


2作目が炎昼ということで次回作は夕方か夜のお話なのでしょうか。
続きが楽しみです。


ネタバレ全開の著者ロングインタビューが
書楼弔堂シリーズ公式サイトにて公開中
シリーズ第三弾は新時代になじめない、おじいさんが主役との事。
京極さん大得意のジジイ小説(;゚∀゚)=3これは期待高まる


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コメント 1

とりこ

はじめまして。
京極堂シリーズとのリンクなのですが、主人公のお友達の美音子さんの実家の菅沼医院って、久遠寺医院にいた小児科医の菅沼と関係ないのかなーと思ったんですがどう思われますか!?
by とりこ (2017-02-05 19:43) 

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