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書楼弔堂 探書捌 普遍 [京極夏彦]

小説すばる2015年2月号に掲載 第8話
第二季の二話目
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はやり唄を鼻歌を口ずさんだ事から女性の有り様に対して
祖父の旧時代の価値観で叱られた事が納得ができないでいた塔子は
反抗心と気晴らしから出かけた道すがらに
前回知り合った若手詩人の松岡(柳田國男)と会う。
彼は書楼弔堂に向かう途中だという
たどり着いた弔堂の店先には演歌師の添田平吉が先客でいた。



今回のお客はノンキ節、ラッパ節などで有名な演歌師
添田啞蟬坊(そえだ あぜんぼう)。
政治批判運動が目的だった演説歌から、より歌として洗練させた技巧で
歌詞作りしたい自分の衝動に迷っていた添田に弔堂店主は
普遍的な芸術の例として、当時は幕府を風刺する絵としての誕生だったのだけれど
今では風刺の意味を理解する人は消えてしまい一枚の芸術として残る
歌川國芳の錦絵「源頼光公館土蜘作妖怪図」を見せたのでした。

元の意味が消えても技巧を凝らした優れたものは残り、後の世で別の意味と
価値が付加されるのが芸術というのが実に面白い話でした。
妖怪でも、鳥山石燕が描いた泥田坊などの創作妖怪は元々は当時の人には
誰の事だかすぐ理解る風刺画だったけど、時代が経つにつれその情報が抜け落ちて
妖怪ウォッチにも登場するような妖怪として今でも残る存在ですものね。

あと“聾唖の蝉”という変わった名前で存在は知っていたけど
歌は実際には聞いたことなかったのですが
YouTubeで検索してみたら痛烈でユニークな皮肉が現代にも通じる内容で
なかなか面白かったです(・∀・)!
今回の題名「普遍」は明治と現代でも人間の中身はそうそう変わらないってことなんでしょうねぇ。



二季から登場しはじめた塔子の事も徐々にわかりはじめました
・尋常師範学校を卒業し、女子高等師範学校にも通った才女
・家族から低俗な物とされている小説を読むことを止められていたが、
反抗心から読んでみたいけれど、まだ実行はできないでいる。
・祖父は薩摩出身
・父は書生芝居を好む人

…うーん、後の国立女子大学に関わる人だと予想してたのですが
そもそも塔子は実在の人物なのかしら(´∀`;
創作でもやたらリアルな設定と描写で現実と融合させるのが京極さんだしなぁ…



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