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「死ねばいいのに 二人目。」 京極夏彦 [京極夏彦]

小説現代6月号掲載。
三ヶ月ぶりの2作目
死ねばいいのに#2.JPG
30ページの短編です。

死亡した派遣女子社員「鹿島亜佐美」が住んでいたマンションの隣室の住人
「篠宮佳織」を訪ねた現在無職の主人公「健也」


話は前回から時系列は不明だけど続いてて
登場人物二人だけの会話で進む形式も継続。


以下、メモ
篠宮は高学歴な自分は派遣切りにあったというのに
さして美人でもなく、普通の亜佐美は
男ウケの良さで派遣先の上司に枕営業で契約更新してたり、
やっとできた彼をも寝取られてしまった…と嫉妬して卑猥な罵倒メールを
自宅や職場に1日60通も匿名で送りつけていた恐い女でした(;´Д`)厭な高学歴



キャラクタに関しては今作で健也の姓が渡来(わたらい)年齢が24歳と判明。
渡来健也…過去の京極作品に渡来の姓は無いよなぁ
でも両親が離婚してるのだからさして意味無いのかも…。


1話を読んだ時点で健也は死者の声が聞こえると
想像したけど亜佐美との出会いは
篠宮の元彼に絡まれていたのを偶々助けたのがキッカケで
数回会って話しただけそうだから違うか、残念。


でもその割にはPCに保存されたメールを読んでたり
篠宮の人物評価をしっかり聞いてたりと随分濃いなぁ…些細だけど謎が深まります。



それにしてもこの作品、すでに死んでいる鹿島亜佐美というキャラクターを
過去描写の挿入や幽霊等で作中には登場させず、
関係者に故人を語らせることで徐々に周辺から人物像を構築しようとするのが
なんとも面白い試みです。
実に仕掛け好きな京極さんらしい


しかも、この2話では篠宮は亜佐美の事を
枕営業してしている女だ…と語るけど
1話で語られたその上司の山崎による話では事実浮気はしてたので
まったく違うとも言いがたいのが予想外な展開。


普通なら1話と2話の順番を逆にして
「枕営業などしていません、実は違います」とでもして
それまでの読者の思い込みをひっくり返したくなるところでしょう…しないんだもんなぁ

さらに今作では篠宮にフラれたと思いこんだ篠宮の元カレ「崇」によって
1度レイプされたとも判明…さらに酷い目にあってる鹿島亜佐美。
篠宮の「嫉妬」に崇の「色欲」とくると、キリスト教の七つの大罪ネタ?
山崎は当てはめるとしたら「傲慢」なのかなぁ…



これから連載がどれ程続くのか判らないけど今後も
邦画だと「キサラギ」の「如月ミキ」みたいに
亜佐美の関係者に訪ねつつ、奥底にある人の身勝手な欲を描く構成になるのかしらー。
また、このまま「嫌われ松子の一生」のように
些細な優しさから酷い目に会い続けていた女、鹿島亜佐美という存在を創るのも面白いかも?

でもそう簡単に一筋縄ではいかないのが京極作品のはず
肝心の彼女が何故、どう死んだのかすらまだ不明と続きが気になります。



でも、掲載が30ページとなると何時まとまって書籍化するんだろ?
掲載分がまとまる時は他のも集中するのだろうし…
そして京極堂シリーズ長編「鵺の碑」はいったい何時書いてるんだろうと('A`)うーん


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Hyatt

「死ねばいいのに」
ブログを開くといきなりこの文字が目に入ってきて、え”? 俺?
と一瞬思ってしまいました。(小心者です)
夏音さん洞察が深いからメモ見るだけで読んだ気になります。

by Hyatt (2009-05-28 00:15) 

夏音

>Hyattさん
酷いタイトルですよね('A`;)
京極さんの作品は分厚いけど、トリック云々よりも
人の暗い感情を細かく描写されていて
時にまるで自分の事を書かれてるようでゾッとするのが魅力なのです。

あと、無駄に深読みしてしまうのはミステリ小説好きの
どうしようのない病ですw
by 夏音 (2009-05-28 19:56) 

Morimo

インパクトがあるタイトルですね。びっくりしました。

by Morimo (2009-05-31 01:05) 

夏音

>Morimoさん
ニュアンスが無い文字だけだと
余計に恐さがアップする気がします。
by 夏音 (2009-06-07 00:11) 

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